LOGIN黒の王、アージェントが言葉を紡ぐ。
「白の国の姫よ
これは私の大事な家族と側近のタルベリイに竜人のアレルド
後程、それは歓迎の食事会の時に
この場にいないもの達も含めてゆっくり紹介しよう」
「私の息子アーシュランは
間もなく、白の国に出発するので挨拶のみになるが」
「王子様、アーシュラン様」
エリンシア姫は彼に微笑みかける
少し戸惑いの表情をみせながら、まだ幼さの残る少年アーシュランは再び会釈した。
「初めまして、白の国のエリンシア姫様
私はこれから、すぐに出発しますので…これにて、失礼いたします
どうぞ、つつがなく黒の国で過ごされてください」
そう言い残して、振り返りもせずにその場から立ち去った。
まだ、幼さが残る
どこか寂しげな後ろ姿が印象に残った。
「エリンシア姫様、どうぞ、こちらです」
明るく笑う幼い少女、王女ティンタル
彼女の瞳も
先ほどの少年、王子と同じもの、宝石のような赤い火焔の瞳
エリンシアは思い出す
そうだったわ、先読みの占い師の間では 有名な話
黒の国の次世代は、焔の使い手
瞳の色はその証を示すもの
でも、本当に不思議な色の美しい瞳だわ
エリンシアはそう思った。
夜、歓迎の宴は始まる。
離れの大広間に向かう 道の途中の屋根のついた柱の道
ふと 気が付いてみると 数頭の馬が王宮の外に出ようとしていた
よく見ると、2頭目の馬に先程の少年
黒の王子アーシュランが乗っていた。
1頭目は警護の者
3頭目には同じく警護の者だろう
たった2人の警護の者だけ
見送る者もなく、まるで捨てられているかのごとく
「・・・」
「姫さま・・」
「あまり、気にされない事です」
それは、つい先程、エリンシア姫付きの女官となった
黒の国の女官は続けて言った。
「王子、あの方の半分の血は、卑しい人族の者ですわ
母親は卑しい身分の者
売春宿にいた事もあるのですから」
「え?それは・・一体どうゆう事ですの?」
女官は
エリンシアに事の次第を問われるまま
あっさりと話をした。
王子アーシュランの母親は人族の娘
しかも一度、攫われて、売春宿にいるところを恋人であった竜の顔を持つ戦士セルトに救われて
ある時、偶然、黒の王の目に止まり、無理やり
恋人との仲を裂かれ
王のものになったという
その為 黒の王はありもしない罪を軍の司令官の一人だった戦士セルトにおわせ、追放させ
戦士セルト
彼は幼い義理の妹とともに王都から出ていったという
しかも そのアーシュラン王子の母親は数年前に流行り病、あるいは何者かの毒で亡くなり
その上、まだ幼い彼は 黒の王妃から大変疎まれ
平和条約の為の人質交渉に真っ先に候補にあがり こうして 白の国の人質となったのだ。
そう、捨てられるように・・
彼はアジェンダ王以来の3百年ぶりに出現した 待望の赤い火焔の瞳の王子のはずなのに
だが、王妃は赤い火焔の王女を産んで
もう、彼は用済みなのだ
「可哀そうに・・」小さな声でエリンシアは呟く。
女官は聞こえなかったか、聞こえないふりをしたのか そのまま エリンシア姫と供に 無言で付き従って行った
その頃、まだ小さなティナは…母親のエリンシアの苦しみ、嘆きも父親アーサーの危機も知らずに屋敷の母親エリンシアの部屋に居たのだった。「本当はいけない事なんだけど」手には白の国の言葉を翻訳書父親の手製のものに、母親エリンシアがティナに教える為に作ったもう一冊の単語の本ゴクリ、唾を飲み込んで母親エリンシアが隠していた小箱を開ける。沢山の手紙に小さな肖像画何故、母親エリンシアに似た少女の絵があるのか?母親の故郷の白の国白の国の若者の絵に…それから黒の王女であるテインタルと同じ黒の国の男女絵の1枚の中で、母親エリンシアに似た少女は黒の国の男女と仲良く三人で描かれていた。そう、三人の表情は明るく幸せそう…「この男性の方はテインタル様と同じ赤い瞳だわ」しみじみと見るティナ「でも、ハンサムだけど…目がかなりツリ目で怖いかも」「あら、こちらの絵はエリンシアお母様とよく似た少女の子供の頃なのね、可愛い、でも子供の頃は髪が短い、それに男の子みたいね…うふふ」「あ、黒の子供、男の子…?こちらは先程の男性の子供時代なのかしら?」「これは!テインタル様の子供時代の絵!豪華な宝飾品に髪飾りに素敵な衣装!」「テインタル様は…普段は簡素な服しか着ておられなくて、あんなに綺麗なのに…どうしてなのかしら?」しばらく考え込むティナ 部屋の暖炉の薪が燃えて、そうしてパチパチと小さい音を立ていた。「そう言えば…巨人族の王様を警戒しているって、そんな話を叔母さんが話をしていたような気がする…どういう意味かしら?」ティナは小さな肖像画を見ながら首を傾げた
剣が素早い動きで、幾度も重なりぶつかり合う!ジャンプして横回転!テインタルの黒髪が舞い、スカートがめくり上がる。「炎の玉!炎の蛇、我が前の敵を滅ぼせ」テインタルが魔法を放つのだ。少年の姿をした異母兄、黒の王アーシュランもまた、身体を回転させテインタルが放つ、容赦ない炎の魔法をかわして時には片手で身体を支え、またジャンプ岩場を蹴り上げ二人は時には横壁の岩を駆けて、また剣を交わすテインタルの顔は呪いのせいで半ば正気を無くして狂気を帯びた憤怒の表情…そして、哀しみの涙が流している。笑い声を上げながら、また異母兄である黒の王アーシュランに襲いかかるのだ。対して、異母兄アーシュランの表情は冷たく狂気的なテインタルの攻撃を受け流して戦う。「炎…」呟くように彼、異母兄の黒の王もまた攻撃の魔法を放つが、その効果は弱めで暴走しているテインタルの体力、魔力が消耗するのを待っているようだった。「テインタル様!」「テインタル様ぁぁ!」アーサーにランディは大勢の黒の兵士達と戦いながら時折、視線を彼女、黒の王女テインタルの姿を見ている。「おい、お前達、その赤毛の二人を殺さずに、だが、逃すなよ!」黒の王アーシュランが叫ぶ…それは黒の兵士達への命令の言葉だった。
「…相手は最大の火焔の魔力の持ち主、兵士どもでは無理か」フードの少年は呟く「お前達、下がれ!あの娘は俺が相手をするあちらの二人を逃がすなよ!」少年は合図をして兵士達を下がらせ、テインタルと対峙した。フードから少年の赤い深紅色の瞳が見えている。テインタルと同じ深紅の瞳…その時、痺れるような感覚を覚えるテインタル彼女の肌に刻まれた呪いが発動したのだ! …恋した淡い初恋の相手だが、呪いに逆らえない、殺す殺すのだ!必ず!「ああ…兄様、兄様!私の愛しい兄様…うふ、うふふ」呟いた声、異様なまでの歓喜に満ち溢れた声狂気を帯びたような…「テインタル様?」 「テインタル様、一体?」アーサーとランディがほぼ、同時に口を開く。テインタルの喜びと苦悶の表情…見た事も無い恋する娘の顔と狂気に満ち溢れた表情を浮かべたテインタルハッとする二人、アーサー達「あのローブの少年、まさか!テインタル様の異母兄、黒の王!」少年の瞳の色、紅蓮の赤それはテインタルと同じく、世界に二人だけの瞳の色だった。「ふふっ、私に刻まれた呪いの入れ墨呪いが発動している…正気を保てない」「愛しい貴方、兄様を殺さなくては血に染まる貴方が見たいの…焼け付くように私の身体に刻まれた呪いの入れ墨が痛いわ!」「呪いの入れ墨が愛しい兄様、貴方を殺せと命じている」「さあ、殺すわ!それとも殺して!喜んで死ぬから!」互いの剣がぶつかり、激しく絶え間なく音を立て岩場を駆け飛び跳ねしながら魔法と剣をぶつけ合う◇ ◇ ◇ティナの方は…あの肖像画に手紙が気になり父親に以前、貰っていた手製の白の言葉の翻訳辞書を手にして、また小箱を明けて手紙の束を見つめた。そして、ティナは母親の悲劇ともう一人の娘異母姉の事を知るのだろうか?
「テインタル様!大丈夫ですか?」「ええ、私なら大丈夫よ」テインタルはアーサーに答えて、手には魔法の光が白く輝いていた。「行け!あの娘を逃すな!」黒の兵士達が次々と襲いかかる「まったく、きりがないわね!」魔法や剣技で蹴散らしながらテインタルが呟く「アーサー様、テインタル様!」部下のランディも加わり、何とか大勢の黒の兵士達から逃れようとしている。他の巨人族の兵士達はほとんどが討ち取られ既にテインタル、アーサー、ランディのみという状況だった。「何としても逃すな!黒の王の命令だ!」今度は巨大な盾を持つ黒の兵士達が隊列を組み逃がすまいと取り囲む「ミスリルの魔法封じの効果のある盾ね!厄介だ事」高くジャンプして、蹴り倒し抗うテインタル「…殺したくはなかったけど」テインタルの瞳が煌めく赤い宝石のように輝き腕を上げて、魔法の言葉、呪文を唱え始めた。「炎の蛇達、我に従い敵を…」燃え上がる炎が蛇のようにうねり、黒の兵士達に絡みつこうとした…。「ぎゃあ!」「うわー」黒の兵士達の悲鳴守りの盾の力で敵の攻撃魔法は届かないはずだったがテインタルの魔法で足先や身体が焼かれそうになる。その時だった「我が名の元に消えろ!炎の蛇ども!」若い男、いや、少年の声が響き渡る黒いローブで顔や姿は隠している者…彼の言葉でテインタルの炎の魔法、炎の蛇が消えたのだった
国境近くの黒の国の陣営で竜人の将軍セルトが受け取った報告 夜の闇の中、陣幕には篝火が燃えていた。魔力を帯びた黒曜石を全面的に使う銀色の鎧に頭の鎧の被り物、マント姿のセルト「その報告、間違いないか!」血相を変えセルトは大声で叫ぶように言う「はい、セルト将軍」竜の人型をしたセルトはチラリと陣幕の向こう側を見て、そのまま指示を出す「何としても、テインタルと言う黒の娘を捕らえよ、生きたままだ!傷は…」陣幕の向こう側から声それは若い男、いや、少年のような声「いや、多少の手傷は仕方ない…相手はあのテイ、テインタルなのだから」 セルトの表情 目を見開き、不安気に曇るのだった。「……」そうして、僅かばかりの沈黙の間「指示に従い、捕らえよ」セルトは兵士達に声をかける。「はい!」兵士達が放たれた矢のように陣幕から足早に立ち去る。セルト将軍、セルトは陣幕の向こう側の人物に声をかけた。「よろしいのですか?テインタル様に何かあれば?」「通常の状態のテイ、テインタルなら兵士達相手では敵じゃない、むしろ兵士達の方が簡単に殺される」「まぁ、今の台詞は…エイルやアル、アルテイシアにバレれたら、俺がただでは済まないか…」「何にしろ、テインタルを連れ戻せたら良いが…テインタルにかけられた呪いの入れ墨があるからな」「アーシュ様」「大事な異母妹だ…可哀想な俺の妹」
「お母様の部屋を掃除しておかないと」まだ小さなティナがホウキを手にする。「ティナ様、私達が致します」すると使用人が声をかけた。「え、大丈夫よ…皆、冬場の仕事も急に増えたから私がする」パタパタと三つ編みにした赤い髪をなびかせながらティナが母親のエリンシアの部屋に入った。ガタン!「あら?」ダンスの上にあった綺麗な飾り縁のついた小箱が掃除中に落ちて来て、ティナはその小箱を手に取る。「まぁ、何かしら?綺麗な箱ね」つい、つい無意識にその小箱を開けてしまうティナ小箱の中には綺麗な宝飾品に櫛に…それから沢山の手紙…小さな肖像画「白の国か、黒の国の言葉ね 文字の意味が分からないわ」「随分と沢山あるわ、それにこの肖像画は?あれ?」1枚は淡い金の髪、エリンシアお母様と同じ種族の若い男性…片腕が無いもう1枚は三人の人物だわ…黒髪の男性と少女 長い耳、テインタル様と同じ種族あ、男性の方はテインタル様と同じ赤い瞳もう一人の人物…エリンシアお母様と同じ種族種族が同じだけでない…オッドアイ、ウェーブのかかった金の髪面立ちが…エリンシアお母様によく似ている?先程の男性もだけど よく似た少女は…もしや、もしかして、エリンシアお母様の血縁なのかしら?肖像画のエイル、エルトニア彼女がティナの異父姉などとは、まだ知るよしもないティナ